心不全とは

心不全とは、様々な心臓の病気を背景として心臓の機能が低下することによって、息切れやむくみなどが起こってしまう病気の総称です(図1)。
心不全の治療をせずに放置すると、どんどん悪化していき、最終的には命に影響する状態となります。

わが国の循環器疾患による死亡率は、がんに次いで第2位となっており、心不全は循環器疾患の主たる病気です。
一番重症と分類される患者さん(ステージD)では、5年間生存できる確率は20%といわれています。
また、軽症の患者さん(ステージA~B)であっても、5年間で5%程度亡くなるとされています。

図1.心不全はあらゆる心臓疾患の終末期 図1

心不全では心臓のポンプ機能が低下するため、まずは全身に送る血液の拍出量が低下します。
それに伴って、脳や消化管や筋肉などに分配される血液量が減るため、各臓器の働きが低下します。
このことにより、自覚する症状として疲れやすくなったり、手足の先などが冷えやすくなったりします。

また、心臓から拍出される血液が停滞するため、肺に送られた血液が心臓に戻りにくくなります。
そのため、肺の内部に血液が滞留することとなり、胸に水がしみ出して安静時でも息切れが起こるのです。
また、血液の滞留は肺だけで起こるわけではありません。
全身の様々な部位(特に足など)で発生し、それらの部位にむくみが生じます。
心不全を疑う症状を自覚した時には、出来るだけ早く循環器内科を受診するようにして下さい。

心不全の検査方法

一般的には、血液検査、胸部レントゲン、心電図検査、心エコー検査が行われます。
血液検査では、主に脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNPあるいはNT-proBNP)がどの程度かを調べます。
この数値が高いときには、心不全が悪化している可能性が高いからです。

胸部X線検査では、心臓の形状、胸水が異常に溜まっていないかなどを把握することが出来ます。
心電図検査では、心不全をきたす心肥大がないか、心筋梗塞などの有無や不整脈の有無を調べることができます。
また、心エコー検査はもっとも重要です。心エコーによって、心不全をきたした原因や心不全の程度を確認することができます。
心エコーでは、心不全の原因として虚血性心疾患や心臓弁膜症や心筋症を評価することが出来ます。

心不全の治療法

心不全の治療として、心不全症状を改善する治療、心不全の原因となっている疾患の治療の2つがあります。
心不全症状を改善する治療としては、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、β遮断薬などの薬物療法が中心となります。
利尿薬は、肺や全身に溜まった水分を体外に排出しやすくし、心臓の負担を減らす効果があります。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬は、アンジオテンシンⅡの生成を抑制することによって末梢血管を拡張させますので、結果的に血圧を下げて心臓にかかる負担を軽減することが出来ます。
β遮断薬は、交感神経系に働きかけ心臓の負担を減らす効果が認められています。

心不全の原因となっている疾患の治療も重要です。
虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)が原因となっていれば、冠動脈の病変に対する冠動脈インターベンション治療を進めます。
心臓弁膜症が原因であるならば、人工弁に対する治療を検討します。
また、不整脈が原因となっているときは、不整脈をただす内服薬が用いられます。

長期にわたる治療・ケアが重要です

薬の服用のイメージイラスト

心臓の機能が低下し、心不全となってしまうと、なかなか元通りの健康な状態に戻ることは難しくなります。
必要な治療を行うことによって症状を改善することは出来るのですが、その後、再び心臓の状況が徐々に悪化して心不全が進行していくケースが多いのです。
そのため、心臓の治療・ケアを長く続けていくことになります。

もっとも、心臓の働きが元通りの健康な状態に戻らなかったとしても、心不全の原因を踏まえて治療を進め、必要に応じて降圧剤などを服用することによって、大きな支障の出ない生活を続けることもできます。
患者さまと循環器内科の医師が良好な関係を構築し、心臓に負担をかけない生活習慣を身につけることが大切となります。