10分800メートルのススメ
- 2025.12.23
まとめ
散歩は大切な健康習慣です。そのうえで、「速めのウォーキング」(Brisk Walking)で高血圧 脂質異常症 糖尿病 改善や動脈硬化の予防につなげませんか。目安は10分で700〜900m進む速さ。今の生活を大きく変えなくても、1日10分から無理なく始められます。
はじめに
「健康のために運動を」と言われると、多くの方が身構えてしまいます。走る、鍛える、続ける。そんなイメージが先に立ち、「自分には難しそうだ」と感じてしまうのです。診察室でも、「運動はほとんどしていません」「何から始めたらいいか分からなくて」という声をよく聞きます。これはとても自然な反応でやむを得ないと思います。医学的に見ても、健康のために最初から本格的な運動を始める必要はありません。高血圧、脂質異常や糖尿病などから体を守るために大切なのは、無理のない形で体を動かす時間を生活の中にどう作るか、という点です。
「散歩じゃだめなんでしょうか?」
散歩は、決して悪い習慣ではありません。外に出るきっかけになりますし、気分転換やストレス軽減にも役立ちます。何もしないより、はるかに良い行動です。そのうえで医学的に整理すると、血圧や心臓病、糖尿病などの予防効果がはっきり確認されているのは、散歩より一段階だけ速い「速めのウォーキング」です。違いは距離でも時間でもなく、歩く速さにあります。つまり「速めのウォーキング」が大切です。
健康に役立つ「速さ」の目安
研究や運動のガイドラインでは、健康づくりに役立つウォーキングは、時速4.5〜5.5km程度で、これは、10分で700〜900メートルほど進む速さです。実は散歩の速さは時速3.5〜4.0km前後。「速い」と聞くと不安になるかもしれませんが、実際には、日本人の平均より少し速い程度です。つまり、健康づくりに必要なのは、特別な運動ではなく、「速めのウォーキング」なのです。
散歩は続けていいんです
ここで誤解してほしくない点があります。今まで続けてきた散歩を、やめる必要はまったくありません。むしろ、すでに歩く習慣があることは、とても大きな強みです。医学的には、その散歩に「少し速い時間」を足せば、自然と少し速いウォーキングに近づきます。全部を変える必要はありません。「今日はここだけ少し速く歩いてみよう」それでいいのです。
どこに住んでても
都市部では、駅まで歩いたり、人の流れに合わせて歩いたりする場面が多く、自然と歩く速さが上がりやすい傾向があります。一方、車移動が中心の生活では、歩く距離や速さが少なくなりがちです。
ただし、これは「車が不健康」という意味ではありません。健康に影響するのは、移動手段ではなく、歩いた中身です。どこに住んでいても、速めに歩く機会を確保するかどうかが大切です。
生活はそのままで、工夫で改善
無理な生活改善は必要ありません。たとえば、駐車場を少し遠くに停める。買い物の前後に10分だけ歩く。移動のついでに、歩幅を少し広げてみる。こうした小さな工夫でも、少し速いウォーキングの条件は十分に満たせます。
研究では、ウォーキングは細切れ(こまぎれ)でも、健康効果は変わりません。「まとめて30分できないから意味がない」ということではありません。続かなかった人ほど、向いています。これまで運動が続かなかった方ほど、ウォーキングは現実的な選択です。準備は不要。道具も不要。できない日があっても、失敗にはなりません。昨日できなかったら、今日10分歩けばそれで十分です。
最後に ― まず10分から!
もし今、「ウォーキングくらいならできそうだな」と少しでも感じたら、それがスタートです。毎日でなくて構いません。完璧を目指す必要もありません。まずは、10分だけ、少し速く歩いてみる。それだけで、体は確実に反応します。速めのウォーキングは、運動が得意な人のためのものではありません。これから始めたい人のための、いちばん現実的な方法です。どうぞ気負わず、できるところから始めてみてください。
東京心臓血管・内科クリニックは人形町でも南行徳でも、皆さまの健康をサポートします。
もし、今の治療に不安があったり、健康診断の結果をそのままにしていたりするなら、ぜひ一度ご相談ください。無症状のうちに予防から、最適なケアをご提案させていただきます。
文責 渡辺弘之