「コレステロール値」が高いといわれていませんか?
- 2024.03.05
目次
看護師の堀井です。今回は、当院でも健康診断結果をみて来院される方の多い「コレステロール値」についてのお話しです。この数値は何を表しているんだろう?受診をしたほうが良いのかな?薬は飲まないといけないの?など、みなさんのお役に立てる情報になればと思います。
・「コレステロール」ってなに?
コレステロールは人間の細胞やホルモン、胆汁酸(脂肪を消化・吸収するもの)の原料になるため体にとって大切です。
体内のコレステロールのほとんどは肝臓で作られ、食事から吸収されるものは20~30%程度です。
コレステロールはそのままでは血液を流れることができないので、LDLやHDLによって全身へ運ばれます。
・食事に気を付けていてもコレステロール値は上がる?
コレステロール値が高い場合、まずはコレステロールの多い食品を避け食物繊維を多くとるなどの食事療法が必須となります。しかし前述のとおりコレステロールは食事だけではなく体内でも作られ代謝されているので、生活改善を試みてもコレステロール値が下がらない方もいます。
食事に気を付けていてもコレステロール値が高い方の中には遺伝的にコレステロール値が上昇している方がいます(家族性高コレステロール血症)この場合、若い時からコレステロールが血管にたまり心筋梗塞や狭心症を起こしやすくなっているので早い段階での診断・治療が重要となります。
特に、LDLコレステロールが180mg/dLの方は注意が必要です。
家族性高コレステロール血症は300人に1人と比較的多い割合です。
また、他の病気や薬の副作用によってもコレステロール値が上昇することがあるので鑑別が必要です。(続発性脂質異常症)
このように、コレステロール値は生活習慣にかかわらず上昇する場合もあるので「気を付けているから大丈夫」と思わずに、まずは受診をお勧めします。
脂質系の検査の種類
・LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
肝臓でつくられたコレステロールを全身に運ぶ役割をしています。しかし、LDLはコレステロールを運ぶだけなので、増えすぎたコレステロールは血管や組織に置いてきてしまい、血管内に動脈硬化の原因となるプラーク(脂肪のかたまりのようなもの)をつくります。
・HDLコレステロール(善玉コレステロール)
血管などに置いてこられた余分なコレステロールを集めて回収し、肝臓に戻してくる役割をしています。
・non-HDLコレステロール(総悪玉コレステロール)
総コレステロールから善玉コレステロールを抜いた数値です。血液中にはLDLコレステロール以外の悪玉コレステロールもひそんでおり、それらも含めた数値です。
・中性脂肪(TG トリグリセライド)
血液によって全身に運ばれ臓器や体を動かすためのエネルギー源となりますが、多すぎて余った分は皮下脂肪や内臓脂肪となり蓄えられます。
検査の数値の見方
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 より
当院でできる、脂質異常の二次検査
上記のように健康診断の異常値で脂質異常症を疑われても、すぐに薬の内服が必要とは限りません。下記のような追加の検査をし、年齢・高血圧などの他のご病気・家族性や続発性との鑑別・患者様の生活スタイルやご希望を考慮して治療の必要性を評価していきます。
・採血
コレステロール値を再検査します。食事から摂ることしかできない脂質の濃度・バランスを測定することで食生活の評価をすることができます。また、脂質以外の項目もみることで他の病気によって脂質異常症が引き起こされていないか鑑別することができます。
・頸動脈エコー
首の血管にエコーを当て、プラークの有無やそれによる血管の狭窄、血管の肥厚を実際に画像で確認することで動脈硬化の進行具合を評価できます。これらは首の血管だけでなく全身の動脈硬化の程度を表し、心臓だけでなく脳血管や末梢血管疾患のリスクの予測に役立ちます。
・ABI、CAVI
足首より中枢(身体の中心側)にある血管に狭窄があるか、閉塞していないか、動脈の硬さやしなやかさを評価し、「血管の年齢」を評価することができます。
このように、健康診断でコレステロール値の異常値を指摘されても数値や項目、併存の病気や追加検査によって今後の治療方針は様々です。
当院では内科専門医・循環器専門医による検査を受けていただくことができ、患者様のライフスタイルや希望に沿うように治療方針を提案させていだくよう心掛けております。ご希望の方には看護師による食事や運動のアドバイスをさせていただくことも可能です。
動脈硬化を起こした血管は元に戻すことはできませんが、生活習慣や内服によって予防していくことは可能ですので、そのままにせず一度ご相談ください。
監修:柴山 謙太郎