【弁膜症シリーズ2】心エコー図で弁膜症に安心を~無症状の弁膜症でも検査が大切
- 2026.01.05
心エコー図で弁膜症に安心を。普段の生活で困ってないからそっとしておく。それは自然な考え方かもしれませんし、不安の裏返しかもしれません。
大事なことは自覚症状無しで悪化する弁膜症があることを理解すること。そしていざとなって困る前に心エコー図で弁膜症に安心を見つけることではないでしょうか。この機会にきちんと評価し、命と暮らしを守りましょう!

1. 心エコー図で弁膜症に安心を
診察の場で、私はよくこんな言葉に出会います。 「もう高齢ですし、ふだんの生活では特に困っていません」 「それなりに、機嫌よく暮らしています。なぜ検査が必要なのですか?」答えを一言でいえば、心エコー図で弁膜症に安心を届けるためです。
私は、高齢だから躊躇したり、無症状だからこのままでもいいのではないかという考え方は、とても自然で、大切なものだと思っています。というのも、この言葉にはご本人やご家族が、今の暮らしを大切にしてきた実感があります。ですから医療の側が、そうした価値観を軽んじてよい理由はありません。
2. 症状無いけど、ほんとに治療?
結論からお伝えすると、症状のない弁膜症に、外科的治療を一律に勧めることはありません。
実際、現在の弁膜症の診療ガイドラインでも、症状のない方に外科的治療を一律に勧めることはしていません。治療の目的は、検査の数値を良くすることではなく、その人らしい生活を全うできるよう支えることにあります。
ですから、「今は元気だから、治療はしない」という選択は、評価を踏まえたうえであれば、医学的にも間違いではありません。
ただ一方で、弁膜症の診療を続けていると、思いがけず重症になってしまうケースがあることも事実です。そして、そのときにどう判断するかが問われます。ここで関係してくるのが、「高齢」という言葉の中身です。
3. 「高齢」だけじゃわからないこと
医療の現場では、「高齢かどうか」を生年月日から計算した年齢だけで判断することはありません。代わりに重視されるのが、実際の体の状態や生活の力です。これを専門的には「生物学的高齢」や「機能的高齢」と呼びますが、難しく考える必要はありません。
たとえば、普段どのくらい自分で動けているか、歩く速さや体力はどうか、身の回りのことをどの程度こなせているか。認知機能や、心臓以外の持病も含めて、その人がどんな生活を送れているかを総合的に見立てます。
同じ80歳でも、元気に外出している方と、日常生活に介助が必要な方とでは、医療の考え方は大きく変わります。
4. 心エコーは、なにをどう見てる?
弁膜症の診療では、心臓の弁そのものだけでなく、心臓の大きさや動きもあわせて評価します。心エコー検査で、弁の動きや心臓への負担を確認するのは、「今すぐ治療が必要か」を決めるためだけではありません。
多くの場合、「今は治療をしなくてよい状態かどうか」を確認するための検査でもあります。今の体力や生活の状態に、心臓がきちんと見合っているかを知るためでもあるのです。
5.「診断」したらオペしなきゃダメ?
ここで大切なのは、「診断」と「治療」を混同しないことです。心エコーを受けたからといって、必ず治療を勧められるわけではありません。
むしろ、「今は治療をしなくてよい」「この状態なら、こういう間隔で様子を見ればよい」と確認するためのものです。特に高齢の方では、「何もしないで穏やかに過ごす」という選択が、尊重されるべき場面も多くあります。
そのためにも、本当に何もしなくてよい状態なのかを、一度きちんと見ておくことには意味があります。どこかに悪化の伏線が潜んでいないかを、医学的に確認しておくことが大切なのです。
6. いのちと暮らしを守る心エコー

つまり、弁膜症の診療で私が大切にしているのは、治療を勧めることではありません。今の暮らしを守るために、医学的に見て「今は何をしなくてよいのか」を、一緒に確認することでもあるのです。
「今は元気だから、何もしない」という選択と、「今は元気だから、状態だけは確認しておく」という選択は、似ているようで少し違います。
後者は、今の生活を大切にしながら、将来の選択肢を減らさないための行動です。ぜひ 心エコーで命と暮らしを守りましょう!
7. よくある質問
Q. 無症状の弁膜症でも治療が必要ですか?
A. 症状がない弁膜症に、外科的治療を一律に勧めることはありません。日本循環器学会の「2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン」でも、無症候性の患者への一律の手術は推奨されていません。
Q. 高齢だと弁膜症の治療は受けられないのですか?
A. そうではありません。現在の医療では、年齢の数字だけで治療の可否を決めることはなく、体の状態や生活の力(生物学的高齢・機能的高齢)を総合して判断します。
Q. 元気で症状もないのに、検査を受ける意味はありますか?
A. あります。検査は治療を前提とするものではなく、「今は何もしなくてよい状態か」を確認するためのものです。状態を知っておくことで、安心して経過を見ることができます。
Q. 検査を受けたら、治療を勧められますか?
A. 必ずしもそうではありません。心エコー検査の結果、「今は経過観察でよい」と確認されることも多くあります。評価と治療は別のものです。
<監修>超音波専門医 渡辺弘之|弁膜症シリーズ 第2回
<参考> 日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会 合同ガイドライン「2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン」(2020年)
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文責 東京心臓血管・内科クリニック 南行徳本院 循環器内科 渡辺弘之