【弁膜症シリーズ1】心臓弁膜症は「症状」で始まらない~症状だけでは見つからない
- 2025.12.26
目次
文責:渡辺 弘之(東京心臓血管・内科クリニック南行徳本院 循環器内科)
この記事の要点
- 弁膜症とは、心臓の「弁」がうまく開かない・閉じない状態
- 弁膜症は症状から始まらないことがあり、進行しても気づきにくい
- 心臓は我慢強い臓器のため、無症状でも負担が進むことがある
- 「症状が出たら見つかる病気」ではなく「症状が出る前に見つけたい病気」
- 状態を知る手段が心エコー検査である

1.弁膜症とはどんな病気?
弁膜症という言葉を聞いて、まず思い浮かべるのは「息切れが出る病気なのだろうか」「症状が出たら気づけるのだろうか」というイメージかもしれません。病名を耳にしただけで、不安になるのはとても自然なことです。
結論からお伝えすると、弁膜症とは、心臓の中にある「弁」がうまく開かなくなったり、きちんと閉じなくなったりする状態です。 そして、私がこれまで数えきれないほどの弁膜症の方を診てきて強く感じているのは、弁膜症は症状から始まらないことがある、という事実です。
2. 心臓の「弁」は、なんのためについてるのか
心臓は、体の中で血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。その心臓の中には、血液が正しい方向に流れるよう調整する「弁」と呼ばれる部分があります。
弁は、血液が進む方向にだけ開く扉のようなものです。開くと血液が前に進み、閉じると血液が逆流しない。この働きがあるおかげで、血液は無駄なく、正しい方向へ流れています。
弁膜症とは、この弁の動きに変化が起きた状態を指します。長く使われた扉が少し重くなったり、閉まりにくくなったりする。それと似たことが、心臓の中でも起こるのです。
3. 弁膜症は、症状から始まらないと聞きました
多くの方が抱きやすい誤解があります。それは「弁に異常があれば、体がすぐに教えてくれるはずだ」という考え方です。
実際には、弁膜症がかなり進んでいても、自覚症状がほとんど出ない方がいます。診察室で「特に困っていません」「元気に生活しています」と話され、検査をして初めて、想像以上に進んだ状態が分かる。そうした場面を、私は何度も見てきました。
これは、患者さんが無理をしているからでも、気づいていないからでもありません。心臓がとても我慢強い臓器だからです。
4. なぜ心臓は無症状で我慢できるのでしょうか?
心臓は、多少の負担がかかっても、しばらくのあいだは何事もなかったかのように働き続けてしまいます。弁の動きに問題が生じても、心臓自身が補おうとするためです。
そのため弁膜症は、「症状が出たら見つかる病気」ではなく、症状が出ないうちに見つかることがある病気なのです。だからこそ、症状だけを頼りにしていると、気づくのが遅れることがあります。
ただし、ここで強調しておきたいのは、弁膜症が見つかったからといって、すぐに強い症状が出たり、治療が必要になるとは限らないということです。多くの方は、日常生活を続けながら、様子を見ていくことができます。
5. 心エコー検査は病気を目で見て測ることができます
そこで重要になるのが、心エコー検査です。心エコーは、心臓の動きや弁の状態を目で見て確認できる検査で、症状や感覚だけでは分からない変化を明らかにしてくれます。
心エコーが必要だと聞くと、「何か悪いことが起きているのでは」と身構えてしまう方もいるかもしれません。しかし私にとって心エコーは、不安を増やすための検査ではなく、判断を誤らないための検査です。
弁膜症は、早く見つかったからといって、すぐに治療が必要になるとは限りません。多くの場合は、今の状態を正しく知り、適切なタイミングを逃さないように見守っていくことが何より大切です。
6. まとめ:まずは正しく知ることから
弁膜症は、決して珍しい病気ではありません。そして、多くの場合、急いで結論を出す必要はありません。
「症状がない=安心」と思ってしまいがちですが、弁膜症ではそれが通用しない場面があります。すぐに何かを決める必要はありません。ただ、知っておくことが、将来の選択肢を守る。そのことだけ、心に留めていただければと思います。
心臓や弁のことは、誰にとっても身近な話題ではありません。わからなくて当然ですし、不安になるのも自然なことです。このシリーズでは、弁膜症について少しずつ、無理のないペースでお伝えしていきます。
7. よくある質問(FAQ)
Q. 弁膜症とはどんな病気ですか?
A. 心臓の中にある「弁」がうまく開かなくなったり、きちんと閉じなくなったりする状態です。弁が狭くなる場合と、閉じきらずに血液が逆流する場合があります。
Q. 弁膜症は症状が出ますか?
A. 弁膜症はかなり進行しても自覚症状が出ないことがあります。心臓が負担を補うため、初期から中期は無症状で経過しやすい病気です。
Q. 弁膜症は自然に治りますか?
A. 弁の構造的な変化は自然には元に戻りません。ただし、すぐに治療が必要とは限らず、経過を見ながら付き合っていける場合も多くあります。
Q. 弁膜症はどうやって見つかりますか?
A. 健康診断での心雑音の指摘や、心エコー検査をきっかけに見つかることが多い病気です。症状がなくても、心エコーで弁や心臓の状態を確認できます。
Q. 弁膜症と診断されたら、すぐ手術が必要ですか?
A. いいえ。弁膜症と診断されても、すぐに治療が必要とは限りません。多くの方は経過観察をしながら日常生活を続けることができます。
<監修>超音波専門医 渡辺弘之|弁膜症シリーズ 第1回 [次の記事]第2回 元気に暮らしているなら、それでいい?