自分の血圧を知っていますか?~高血圧は早めに受診をしましょう~
- 2023.12.01
目次
こんにちは、看護師の三浦です。
12月に入り、ここ最近は冬らしい気温になってきましたね。今日は寒くなると高値になりやすい血圧についてお話しさせていただきます。
健康診断でも指摘されることが多く、「高血圧」という言葉は皆さまも良く耳にすることがあると思います。何年も前から指摘を受けているけれども受診のタイミングがなく経過している方もいらっしゃるのでははないでしょうか。まずは分かりやすく血圧について説明していきます。
・血圧ってなあに?
血圧とは心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです。また、一般に「上の血圧」と言われているものは収縮期血圧といって、心臓が収縮し全身に血液を送り出すときの圧力になります。反対に「下の血圧」と言われているものは拡張期血圧といって心臓が拡張し、全身からの血液が戻ってくるときの圧力になります。
どのような要素が血圧の値を決めるのかというと、血圧は心臓から送り出される血液の量(心拍出量)と血管の硬さ(末梢血管抵抗)で決まります。
・収縮期血圧と拡張期血圧はどっちが優先?
血圧の評価をする時には最近ではとくに収縮期血圧を優先してみていきます。血圧コントロールをする場合には収縮期血圧の方が問題になることが多く、心血管系イベント(心筋梗塞や脳梗塞などに代表される心血管系の病気の発症や死亡など)のリスクとの関係も大きいためです。
高血圧学会のガイドライン2019によると、拡張期血圧80mmHg未満の降圧を達成した場合は拡張期血圧80mmhg以上と比較して心不全と冠動脈血行再建率は減少しますが、心血管死亡、心筋梗塞、狭心症、脳卒中リスクは同等との研究結果が出ています。
・高血圧の原因は?
高血圧となる要因は遺伝的体質や様々な環境要因があります。特に環境的要因は喫煙、肥満、ストレス、運動不足、飲酒、塩分過多、糖尿病、脂質異常症などです。加齢や生活習慣病などで動脈硬化が進むと血管が硬くなるので徐々に血圧が上昇していきます。あわせて、体内にに水分をため込みやすくする塩分の多い食事や血管を収縮させる喫煙などを続けていると、さらに血圧は上昇しやすくなります。
生活習慣は自分でも分かっていても、仕事や家事、育児と日々の忙しさに追われているので改善することはなかなか難しいですよね。
・高血圧の種類
高血圧のうち、90%は本態性高血圧といって血圧上昇をきたす基礎疾患は認めず、上記のように遺伝的要因と環境的要因が関係するものと、残り10%は二次性高血圧という、高血圧をきたす原因が明らかなものに分かれます。当院では後者の二次性高血圧についても背景疾患の原因を調べるための採血・採尿検査も行っております。
また、自宅血圧と診察室血圧の値が大きく異なるとき、それぞれ高血圧の種類を分ける場合もあります。例えば、自宅での血圧では正常だけれども診察室では高血圧となってしまうものを白衣高血圧、逆に診察室では正常な血圧だけれども自宅では高血圧となるものを仮面高血圧といいます。
白衣高血圧は降圧治療の対象となりませんが、逆に仮面高血圧は治療の対象となります。そのため、ガイドラインでは自宅血圧の方が診察室血圧よりも重要とされます。
・高血圧は放置しているとどうなるの?
高血圧を放置しておくと、血管の壁には常に強い圧力が加わり、心臓の筋肉は常に強い力で収縮を繰り返します。その結果、血管や心臓への負荷が強くなり、脳出血や心肥大からの心不全、心筋梗塞の発症など命にかかわる疾患に繋がってしまうことがあります。循環器専門病院の検査では血圧を下げる治療だけではなく、高血圧がもたらす心臓や血管の負荷状態から新たな病気に至っていないかどうかもしっかりと検査をしていきます。
・高血圧に症状はあるの?
基本的に無症状であることが多いですが、高値なるにつれて人によっては頭痛やめまい、ふらつき、気持ち悪さ、頭がぼーっとする、後頭部や首のあたりが引っ張られているような感覚などが出現することもあります。
自覚症状がない場合は血圧を測定する機会がないと高血圧であることに気付くことが出来ませんので、健康診断を毎年受けていない、受診の機会がないなどの測定のタイミングがない方は町の薬局、保健センターや運動施設などの公共の施設、通われているスポーツジムなどに血圧計が置いてありますので一度、測定してみてください。
・血圧を下げるお薬について💊
患者さんからよくお聞きする声が、「血圧のお薬って一回飲み始めると、一生飲み続けないといけないって聞いて病院を受診する勇気が持てなかったんです。」といったものです。自覚症状があり血圧が非常に高く、合併症の危険が予測される場合や、生活習慣の改善後も血圧が低下しない場合には医師の判断によりすぐに降圧薬を必要とすることはもちろんありますが、まずは食事・運動療法から開始することが多いです。
また、高血圧の内服薬は食事・運動療法と併せて継続することが基本となりますので、生活習慣の是正と共に血圧が正常化するようであれば降圧薬が減量することや中止になることもあります。
・自宅血圧を測定してみよう!
血圧が高値であった場合は自宅でも本当に血圧が高いのかどうか、自宅血圧を確認してみてください。
人によっては健康診断や病院などの医療機関で測定すると緊張から高値になってしまう方もいらっしゃいますので、現在は高血圧かどうかの診断はご自宅での朝・晩の安静時血圧を少なくとも1週間は継続して測定し、平均値を見ていきます。自宅血圧をチェックすることによって、自分が先ほどお話しした、白衣高血圧や仮面高血圧に当てはまらないかを確認することが出来ます。
病院では高血圧だけれども、自宅では正常の場合は降圧薬を内服することによって血圧を下げ過ぎてしまう危険性もあります。このことから、高血圧を心配されている方は受診されるときに自宅血圧を1週間分記録しご持参くださると、より正確な診断に繋がります。
💡血圧を測る時のポイント💡
・血圧計の種類:二の腕で測定するタイプの物が正確でお勧め!
・測定時の姿勢:二の腕に巻く布が心臓と同じ高さになるようにテーブルに座って測る。
・血圧計のセンサー(写真の赤〇)は肘の内側の真ん中あたりに当てる。
・指1.2本入る程度のきつさで巻く。
・毎回、同じ腕で測定する。(麻痺や手術でリンパ切除などがなく、血圧の左右差がなければ、利き腕と反対の腕に巻くことでセンサーを正しい位置に当てやすい)
*明らかに左右差がある場合は、高い方で測定する。
測定のタイミング
◎朝起きたら
・排尿後 ・朝の内服前 ・朝食前 ・支度など動き出す前の安静な状態で
◎夜、寝る前に
・入眠前のゆったりとした安静時に
✗ 血圧測定を避けた方が良いタイミング
・運動直後 ・入浴直後 ・食後1時間以内 ・タバコを吸った直後
・お酒、コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどのアルコールやカフェインを摂取した直後
・降圧目標
降圧目標は疾患や状態など個人によって異なりますので診察時に医師と相談してください。
※高血圧治療ガイドライン(JSH2019)
当院では高血圧、糖尿病、心不全に関して看護師の療養指導も行っております。一対一で現在の体の状態やライフスタイルなどをしっかりとお聞きして、患者さん一人一人に合わせた無理のない、食事内容や減塩、運動、減量目標などを患者さんと一緒に設定し、健康のお手伝いをさせて頂いておりますのでお気軽にご相談ください。
全て循環器専門の医師が診察を行っておりますので、患者さんの状態に合わせた降圧薬の処方や検査を実施しておりますので安心して受診いただけます。高血圧症から引き起こされる、脳出血や心肥大など次の疾患に至る前に早めに受診されることをお勧めします。
監修:柴山 謙太郎