歯医者さんへいっていますか?②~虫歯や歯周病から起こる心臓のこわい病気~
- 2025.06.17
目次
こんにちは、看護師の堀井です。
前回は、お口の環境とくに歯周病と健康にはつながりがあることをお話ししました。
今回はそんな歯周病や虫歯を放置することで起こる心臓な重篤な病気 「感染性心内膜炎」についてのおはなしです。
感染性心内膜炎ってなに?
歯周病や虫歯などで血液に菌が入った時、心臓まで菌が達し心臓の壁の内側や血液の流れをコントロールする「弁(べん)」という部分や心臓の内側の膜などにくっついて増殖して感染を起こすことがあります。
これを「感染性心内膜炎」といいます。
頻度は少ないですが、場合によっては入院・外科手術が必要になるようなこわい病気です。
この菌が心臓で塊をつくると「疣贅(ゆうぜい)」と呼ばれ、これが心臓の構造を破壊して機能を障害したり、全身にばらまかれたりすることで様々な問題を引き起こします

原因は口腔内の菌!?
前のブログにも書いたとおり、歯周病や虫歯があると口腔内から血液の中に菌がはいりやすくなります。健康な人であれば問題なく排除されますが、心臓に持病がある場合はリスクとなります。
歯周病のほかにも、皮膚の傷や感染症・手術などが原因になることがありますが、主な発生源として口腔内(口の中)の細菌が非常に重要視されています。
感染性心内膜炎はどんな症状がおこるの?

感染性心内膜炎にかかると、主に以下の3つの問題が起こります。
① 全身の感染症の症状
ばい菌による感染を起こしているので、発熱、体がだるい、食欲がない、体重が減る、寒気、発汗、関節や筋肉の痛みなど、風邪の時のような感染症の症状が起こります。
とくに発熱はなかなか下がらず、続くことが多いです。
② 心臓の機能が悪くなる症状(心不全の症状)
ばい菌の塊が心臓の中にある弁を壊してしまうと、弁がうまく閉じなくなって血液が逆流したり、逆に開きにくくなったりします。
そうなると、心臓が全身に効率よく血液を送れなくなり、息切れや呼吸が苦しい、体がむくむといった心不全の症状が出ます。
③ ばい菌の塊が全身に飛んでいく症状(塞栓症)
心臓にできたばい菌の塊の一部がはがれて、血液の流れに乗って全身の血管に詰まってしまうことがあります。これを「塞栓症(そくせんしょう)」と呼びます。
詰まる場所によって、様々な症状が出ます。
- 脳の血管に詰まる(脳梗塞):手足の麻痺、ろれつが回らないなど
- 腎臓の血管に詰まる(腎梗塞):血尿が出るなど
- 腸の血管に詰まる(腸管虚血):腹痛、血便など
- 手足の血管に詰まる:手足の痛みや色の変化など
このように、感染性心内膜炎は心臓だけでなく全身の様々な臓器に影響を及ぼし、非常に危険です。
放っておくと命に関わるような重篤な病気であることがわかりますね。
要注意!感染性心内膜炎にかかりやすい人
下記に当てはまる方はリスクが高くなります
・心臓弁膜症の手術をしたことがある
・生まれつき心臓に穴があいている、といわれた(心室中隔欠損、動脈管開存)
・心臓弁膜症と言われたことがある
・過去に感染性心内膜炎にかかったことがある
健康な心臓の弁には菌がつきにくいのですが、元々心臓に病気がある人(心臓の弁に異常がある、生まれつき心臓の形に異常があるなど)や、人工弁が入っている人は、菌がつきやすく感染性心内膜炎になるリスクが高くなります。
感染性心内膜炎の予防で大切なこと

上記に当てはまる方は歯周病や虫歯の放置だけではなく、歯科治療や抜歯・歯石を取るような処置でも感染性心内膜炎のリスクが上がるので、ガイドラインでも処置前に予防として抗菌薬の内服が推奨されています。(感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン 2017年改訂版)
また、その際に感染性心内膜炎を予防するための抗菌薬の処方をするのは、処置をおこなう歯科の先生となります。
そのため、まずは歯科受診の際にはそのような既往があることを歯科医に伝えてください。
そして通院している循環器内科が既にあれば、歯科医師にお願いして循環器内科の先生に診療情報提供を依頼するための手紙を書いてもらってください。
また、そのようなリスクのある方で歯科治療後に長く発熱が続いている場合にも注意が必要です。感染性心内膜炎をできるだけ早く除外するために、心臓超音波検査のできる循環器専門医の早期受診を強くおすすめします。
監修:柴山 謙太郎