初めての受診、どんな検査ができますか?~迅速検査のご紹介~
- 2023.11.06
こんにちは、看護師の三浦です!本日は初めて来院される患者様から良くいただく質問、「今日はどんな検査ができますか?」についてお答えさせていただきたいと思います。
当院を受診される多くの患者さんの症状は胸痛、動悸、息切れ、足の痛みなど、心臓や血管などにまつわる様々なものがあります。その中でも、皆さまが特に不安に思い受診される症状が発症してから間もない胸痛と下肢疼痛です。
インターネットが普及している昨今では、まず最初にご自身の症状を検索されてから病院を受診される方が多くいらっしゃいます。胸痛で検索をすると、心筋梗塞、狭心症、大動脈解離などがヒットし、下肢の痛みや腫れは深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などが検索に引っかかることが多いようです。
患者さんはこれらの様な命にかかわる疾患や緊急性を要する疾患ではないかと不安を抱えながら来院されるので、その日のうちに緊急性があるかどうかを知りたいと思う気持ちはとてもよくわかります。
当院にはその日のうちに結果を知ることができる検査がいくつかありますので、当日の検査までの簡単な流れと併せてご紹介いたします。
症状がある時の来院後~検査までの流れ
症状が続いている患者さんが来院されましたら、まず最初に緊急性を要する状態であるかどうかを判断するために医師及び看護師が症状の聞き取りを行いながら、速やかに血圧・脈拍、体温、酸素状態を測定し、症状に併せて心電図検査を実施します。
その後、医師の判断により胸部レントゲンやトロポニン迅速検査やDダイマーの迅速検査、BNP迅速検査を含めた血液検査など、当日にすぐに施行できる検査を行うことになります。そして、これらの当日検査の結果や症状や身体所見の状況によっては、緊急で心臓超音波検査(心エコー)を実施することがあります。
総合病院をすぐに受診できない方でも、心臓のスクリーニング検査(緊急性を要する心疾患の可能性であるかどうかのふるい分け検査)をできることは当院の専門性を生かした特色・強みと言えます。
その中で今回ご紹介させていただくのは採血で分かる迅速血液検査になります。
・トロポニン迅速検査
主に胸痛などの症状が続いており、心筋梗塞や危険な狭心症、心筋炎などが疑われる場合に実施します。
冠動脈が血栓により閉塞してしまう心筋梗塞や冠動脈の著明な狭窄などで心臓の筋肉に血流が届かない虚血状態となると、心臓の筋肉が徐々に壊死していってしまいます。その際に心筋に含まれているトロポニンTという酵素が血中に漏れ出していきます。このトロポニンTは心筋梗塞発症から3時間経過した頃から検出できるようになります。このトロポニンTがすでに出現しているかどうかについて、採血した血液を少量使用して15-30分程度で検査結果を知ることができます。
さらにトロポニンTが陽性となった場合、必要に応じて心臓の動きが悪くなっていないかを確認するために緊急で心臓超音波検査(心エコー)を合わせて行うこともあります。これらの検査結果から緊急性の高い心筋梗塞や危険な狭心症などを疑う場合には速やかに専門的な処置を行える高次医療機関をご紹介いたします。
・Dダイマー迅速検査
下肢疼痛や胸痛で深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、大動脈解離や大動脈瘤破裂などが疑われる場合に実施します。
Dダイマーは体の中で血栓を生じると高値になります。エコノミークラス症候群と呼ばれることのある深部静脈血栓症では、下肢などの静脈に血液が固まってできる血栓が生じることによって下肢に痛みや腫れ、発赤、熱感が出現します。深部静脈血栓症の中には、この血栓が血流に乗って心臓さらには肺動脈まで運ばれてしまい、肺の血管を詰まらせてしまう肺血栓塞栓症を起こすこともあります。
深部静脈血栓のすべてが肺血栓塞栓症を起こすわけではありませんが、急性の場合は胸痛や呼吸困難、チアノーゼ、ショック症状など危険な状態を呈します。また、慢性の場合は無症状のこともありますが、動いた時の息切れや咳などが出現することもあります。
Dダイマーの検査も採血した血液を少量使用し、10-20分程度の時間で検査結果を知ることができます。Dダイマーが高値の際には、医師の判断に応じて緊急で下肢静脈の血栓を確認するために超音波検査を合わせて行うこともあります。血栓の範囲が広範囲である場合や肺血栓塞栓症の症状がある場合には専門的な処置を行える高次医療機関をご紹介いたします。
・BNP迅速検査
心不全症状の増悪などで心臓にかかる負荷が増大している可能性がある場合に実施します。
BNPは心不全や不整脈などで心臓に負担がかかると上昇してきます。当院は循環器内科ですので普段からも心疾患の患者さんの採血ではNT-proBNPというBNPとほぼ同じ意味合いのある項目を用いて心臓の状態を医師が把握をしていますが、緊急の心不全増悪で呼吸苦や動悸、血圧低下、酸素化の低下などの症状がみられた場合には迅速でBNP検査を行い心臓に異常な負荷がかかっていないかを調べることができます。
BNPの検査も採血した血液を少量使用し、10-20分程度の時間で検査結果を知ることができます。また、医師の判断に応じて心臓超音波検査(心エコー)で心機能や心不全の有無も併せて確認していきます。入院加療が必要な場合には、入院可能な循環器内科病棟がある総合病院をご紹介いたします。
以上がご来院された当日にできる迅速検査のご紹介でした!
疾患は一つの検査だけではなく、様々な方面から多角的に診ていくことが大切です。迅速検査だけではなく当院の精度の高い超音波検査と合わせることによって正確性の高い診断に近づいていきます。
当院の所属医師は全員が循環器内科の専門医師であり、心臓超音波検査(心エコー)の専門医師も多く在籍しております。そのため、患者様が様々な心臓や血管の症状をお持ちでいつ来院されても、緊急性の高い心血管疾患について高い精度で診断をすることができます。
また、クリニックで心臓超音波検査(心エコー)専門の臨床検査技師が複数常駐していることも当院の高い専門性を維持できる理由です。心臓超音波検査は超音波画像を正確に読み取ることができる循環器専門医の存在は必須ですが、医師が診断に用いる、心臓超音波画像を超音波の検査機械で正確に描出し測定をすることは臨床検査技師の専門的な知識や熟達された技術、豊富な経験が非常に重要となります。
専門性の高いクリニックではありますが、この様に病院の情報を発信しながら皆様に知っていただき、地域医療として患者さん一人一人の健康に寄り添える身近な病院でありたいと思っております。症状や病気の不安がある時はお一人で我慢せず、お気軽にご相談ください。
監修 柴山 謙太郎