【弁膜症シリーズ3】弁膜症は高齢者だけの病気ではありません
- 2026.01.26

- 弁膜症は高齢者の病気ではなく、若い世代にも起こる
- 治療を考えるには人生観も大事
- 適切な選択で弁膜症の治療リスクは低下傾向
- 高度の弁膜症を放置すると、心機能低下リスクが上がる
- 弁膜症なら早期治療ではなく、心エコー評価が前提
1. 弁膜症は高齢者の病気ですか?
これまでのお話で、「弁膜症は高齢の方に多い病気」という印象を持たれた方もいるかもしれません。確かに、年齢とともに増えてくる弁膜症はあります。しかし、弁膜症は高齢者だけの病気ではありません。 中年の方、若い世代の方にも、弁膜症は起こります。
実際の診療では、仕事を続け、運動もでき、日常生活にまったく不自由のない方が、検査をきっかけに弁膜症と分かることがあります。
「こんなに元気なのに、本当に何か考える必要があるのですか」と驚かれるのは、とても自然な反応だと思います。
2. わりと元気なのに、なぜ治療まで考える?
ここで大切なのは、治療を考える理由は年齢ではなく、その人がどんな人生を送りたいかという点です。
活動性が保たれ、これからも仕事や趣味、旅行を楽しみたいと考えている方にとって、心臓の状態は、将来の生活の質に直結します。
私は、そうした方にこそ、弁膜症の治療を選択肢として整理しておく意義があると考えています。
3. 治療のリスクは下がってきたってほんと?
理由の一つは、弁膜症の治療リスクが、適切に選択すれば、かつてより確実に下がってきていることです。
外科手術の安全性は大きく向上し、さらにカテーテル治療など、体への負担を抑えた選択肢も増えてきました。
外科的治療は「最後の手段」ではなく、将来の生活を守るための手段になりつつある、というのが現在の医療の現実です。
4. 家族には、症状が出たら考えようと言われましたが
確かに一理ありますが見逃せない事実もあります。
それは、高度の弁膜症を「症状がないから」と判断して経過を見続けた場合、症状が出た時点では、心臓の機能が元に戻らない段階まで低下していることがある、という事実です。
弁膜症では、症状が現れる前から、心臓は無理を続けています。その状態が長く続くと、治療を行っても、以前のような心機能まで回復しないことがあります。
このため、弁膜症の診療では、「症状が出てから考える」よりも、心機能が保たれているうちに判断することが重要になります。特に、若年・中年で活動性が高い方では、この視点が、その後の人生に大きな差を生みます。
5. すべての弁膜症に、早期治療が必要なのか
誤解していただきたくないのは、すべての弁膜症に早期治療が必要というわけではない、という点です。
大切なのは、年齢や症状だけで判断するのではなく、心エコーなどの検査を通じて、心臓が今どの段階にあるのかを医学的に知ることです。
早期に治療すべき弁膜症もあれば、長く経過を見ていける弁膜症もあります。その見極めが何より大切です。
6. まとめ:元気な今だからこそ知っておくこと
弁膜症の診療で私が重視しているのは、「今すぐ治療をするかどうか」ではありません。今、治療について考えることで、その人がこれからの人生をどう過ごせるか、その可能性を一緒に整理することです。
弁膜症は、高齢者だけの病気ではありません。そして、元気な人ほど、治療のタイミングが将来を左右することがあります。
だからこそ私は、「今は元気だから何もしない」だけでなく、「元気な今だからこそ、選択肢を知っておく」ことをお勧めしています。
7. よくある質問
Q. 弁膜症は高齢者だけがなる病気ですか?
A. いいえ。弁膜症は加齢とともに増えますが、中年・若い世代にも起こります。生まれつきの弁の形や、過去の病気がきっかけになる場合もあります。
Q. 元気で症状がないのに、なぜ治療を検討するのですか?
A. 高度の弁膜症を無症状のまま放置すると、症状が出た時点で心機能が回復しにくい段階に入っていることがあるためです。心機能が保たれているうちの判断が重要です。
Q. 弁膜症の手術は高リスクですか?
A. 適切に選択すれば、弁膜症の治療リスクはかつてより下がってきています。外科手術の安全性が向上し、カテーテル治療など体への負担が少ない選択肢も増えています。
Q. 若い人の弁膜症は、すぐ治療すべきですか?
A. すべての弁膜症に早期治療が必要なわけではありません。心エコー検査で心臓の状態を評価し、治療すべきか経過を見るべきかを見極めることが大切です。
<監修>超音波専門医 渡辺弘之|弁膜症シリーズ 第3回
<参考> 日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会 合同ガイドライン「2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン」(2020年)
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文責 東京心臓血管・内科クリニック 南行徳本院 渡辺弘之