女性に多い心臓の病気と、受診の目安~Go Red for Women~

  • 2026.02.06

こんにちは、看護師の堀井です。

暦の上では春を迎えましたが、まだ寒さの厳しい日が続いています。寒い季節は血管が縮こまり、心臓や肺に負担がかかりやすい時期でもあります。

アメリカではこの2月が「心臓の健康を考える月」として広く浸透しており、建物やランドマークを赤くライトアップしたり、SNSやメディアを通して心臓病の予防や早期発見を呼びかけたりと、さまざまな活動が行われています。
学校や職場でも健康について話し合う機会が設けられ、心臓の病気を身近なこととして考える月になっています。

さて、みなさんは心臓病に対して「男性がなりやすい病気」というイメージを持っていないでしょうか。

実は心臓病は、女性に多いタイプの狭心症など男性とは異なる特徴をもつ病気もあり、女性の死亡原因の「老衰」に次いで第3位の重要な病気です。

こうした認識を広げるため、アメリカでは米国心臓協会(AHA)が「Go Red for Women」キャンペーンを主導しています。
これは、世界50以上の国や地域で、2月の第1金曜日を「National Wear Red Day(赤い服を着る日)」とし、赤い色を身につけて女性の心臓病への理解と関心を高める取り組みを行うものです。

今回はこれにちなんで「女性の心臓病」についてお話していきます。

気になる症状を「気のせい」にせず、自分の体を見つめ直すきっかけとしていただければと思います。


「健康診断」する割合は女性<男性

2022年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、20歳以上で過去1年間に健診や人間ドックを受けたことがある人は男性が73.1%、女性が65.7%と女性のほうが低い傾向にあります。

とくに、30~39歳・70歳以上の女性は低い傾向にあります。

これは決して女性の健康意識が低いわけではなく、働き方や生活環境、症状の現れ方など、複数の要因が重なっています。


女性は受診が遅れやすい?

心臓の病気に関する研究では、症状が出たときに女性は男性よりも医療機関に相談するまでに時間がかかることがあると報告されています。
胸の痛みではなく、息切れや吐き気、体のだるさなど、分かりにくい症状として現れることがあり、「少し様子を見よう」と思ってしまうことが背景にあると考えられています。

また、更年期症状との重なりや「心臓病は男性の病気」というイメージなどから、症状が心臓のサインだと気づきにくい場合もあります。
さらに、女性では検査で異常が見つかりにくいタイプの心臓病もあり、「様子を見ましょう」と言われて受診が後回しになることも少なくありません。


こうした背景が重なり、結果として受診が遅れやすくなる傾向が国内外の研究で指摘されています。


女性に比較的多い、心臓・血管の病気

微小血管狭心症(CMD)

一般的な狭心症は、心臓の表面を走る太い冠動脈が動脈硬化などで狭くなり、血流が不足することで起こります。

微小血管狭心症では、太い血管には目立った詰まりがないのに心臓の中に張り巡らされているとても細い血管(微小血管)の働きが悪くなるため起こります。
一般的な検査では異常が見つからないことがあり、「異常なし」と言われてしまうケースも少なくありません。

画像検査だけで診断がつくとは限らないので、症状の経過や反応などを含めて評価されることもあり専門的な視点での評価が必要になる場合があります。そのため、診断までに時間がかかることがある疾患です。

心不全(HFpEF)

心不全は心臓の働きが十分に保てなくなった状態を指す言葉で、いくつかのタイプがあります。
心不全というと「心臓の力が弱くなる病気」というイメージがあるかもしれません。
しかしHFpEFというタイプの心不全は、心臓の収縮する力は比較的保たれている一方で、心臓が硬くなり、広がりにくくなることで起こる心不全です。


高血圧や加齢との関連が深く、とくに高齢の女性に多いことが知られています。
一般的な検査では重症に見えにくく、体調の変化がゆっくり進むことが多いため、診断までに時間がかかる場合があります。

検査には心臓の動きやしなやかさを確認できる心エコー検査(心臓超音波検査)が、大切な手がかりになることがあります。
当院は心エコー検査を得意としており、症状やこれまでの経過も踏まえながら、心臓の状態を丁寧に評価しています。

たこつぼ型心筋症

たこつぼ型心筋症は、強い精神的・身体的ストレスをきっかけに、心臓の動きが一時的に低下する心筋症です。
心筋梗塞とよく似た症状や検査所見を示しますが、冠動脈に明らかな詰まりが見つからないことが特徴です。

また、世界中の病院のデータをまとめた研究では、たこつぼ型心筋症の患者さんのほとんど(約9割)が女性でした。そのため、この病気は女性に起こりやすい心臓の病気として知られています。

きっかけとなるストレスは人それぞれで、身近な出来事が引き金になることもあります。
たとえば、身内との死別、手術や急な体調不良、強い痛み、交通事故などの大きな精神的・身体的な負担が原因となった例も報告されています。

たこつぼ型心筋症の検査も、心臓の動き方を丁寧に観察することが重要になります。
特に心エコー検査では、たこつぼ型心筋症に特徴的な心臓の動きを確認できることがあり、診断や経過観察に役立ちます。


気になる自覚症状や受診の目安

・胸に違和感や重たい感じが出ることがある

・階段や坂道で、以前より息切れしやすくなった

・日常生活(家事・仕事・外出)が以前よりつらく感じる

などの自覚症状が出ることが多いです。

・症状を何度も繰り返す、または少しずつ強くなっている

・「年齢のせい」「更年期かも」と思っても、気になる感じが消えない

など、はっきりした痛みがなくても「いつもと違うな」と感じたら、早めに相談してみてください。


女性の患者さんにも相談しやすい環境を目指しています

診察や検査を受けるとき、「こんなことを聞いてもいいのかな」「たいしたことではないかも」「年齢や更年期のせいかも」と受診をためらってしまう方は少なくありません。
とくに女性ならではの体調の変化も重なることで、不安を抱えたまま受診が遅れてしまうことがあります。

当院では、そうした「相談しにくさ」そのものを減らすような関りを大切にしています。

当院には女医が在籍しており、初診時にもできるかぎり女性看護師がお話しをうかがえるようにしています。また、心エコーや心電図など全ての検査はすべて女性スタッフが担当しています。

女医による診療は、毎週月曜日午後、金曜日午前、第一・第三月曜日午前、第二・第四土曜日午前に行っています。

変動する場合もありますのでご不明な点はお電話でお問い合わせください。

また、女医による診療をご希望の際は窓口にてお伝えください。


最近では、日本でも「Go Red for Women」の考え方に共感する動きが少しずつ広がってきています。
日本循環器協会が主催する「Go Red for Women Japan」プロジェクトでは、2月に東京・大阪で女性の循環器病をテーマにした健康セミナーが開催され参加者が増えています。

私自身も、今年2月7日の「Wear Red Day」に参加する予定です。
この活動をきっかけに、女性の心臓病についてさらにあたらしく・分かりやすくお伝えできる情報や、日々の診療や地域医療に役立つ気づきを、みなさんと共有していけたらと思っています。

この2月が、ご自身の体や心臓の健康について考えるきっかけになればうれしいです。

監修:柴山 謙太郎(東京心臓血管・内科クリニック統括本院 循環器内科)

PAGE TOP