『息切れ』は「体力の問題」だけじゃない~息切れって何ですか?~

  • 2025.12.19

息切れは身の回りで階段や坂道を上ったり、急いでいるときに少し走ったり、いつもより負担が大きい動作をしたときに感じることがあると思います。

そのときには、「昔は感じていなかったのに」や「こんなはずじゃないのに」という心理的なショックもあるのではないでしょうか。

今回も渡辺弘之医師に息切れの解説をしていただきます。(柴山 謙太郎)

私たちがよく聞く『息切れ』には、こんなにたくさんの種類があります。

  • 「息が足りない感じがします」
  • 「ちゃんと吸えていない気がします」
  • 「深呼吸しても、すっきりしません」
  • 「空気が薄いところにいるみたいです」
  • 「息を吸おうとしても、途中で止まる感じがあります」

動いたときの息切れには

  • 「前は普通にできていたのに、最近しんどくなりました」
  • 「階段を上ると、途中で立ち止まりたくなります」
  • 「歩くスピードが自然と遅くなりました」
  • 「人と一緒に歩くと、ついていけません」
  • 「息を整える時間が必要になりました」

安静時・夜間の息切れには

  • 「横になると息が苦しくなります」
  • 「夜、息がしづらくて目が覚めます」
  • 「枕を高くしないと眠れません」
  • 「寝ていると胸が重く感じます」

息切れについて患者さんがよく言う一言は

  • 「苦しいというほどではないんですが…」
  • 「はっきりした症状じゃないんですけど…」
  • 「気のせいかもしれないんですが…」

実は、患者さん自身が「大したことではない」と前置きしながら話す息切れほど、
実は変化のサインであることが少なくありません。

1.息切れは歳のせい?

息切れには、「歳のせいだろう」「最近あまり運動していないから仕方がない」という解釈があります。確かに、そうした理由で説明できる息切れもあります。しかし、息切れは単に体力低下だけで起こる症状ではありません。心臓や肺の状態が変化したときに、比較的早い段階で現れる重要なサインでもあります。
問題は、その変化がゆっくり進むため、見過ごされやすいという点です。息切れを判断するうえで重要なのは、「今つらいかどうか」だけではなく、「以前と比べてどうか」という視点です。

2.注意が必要な息切れ

  • 安静にしていても息が苦しい
  • 横になると息がしづらく、座ると楽になる
  • 夜間、息苦しさで目が覚める

これらは、心不全など心臓の病気でよくみられる症状です。
心不全では、心臓が全身に十分な血液を送れなくなり、肺に水分がたまりやすくなります。その結果、息切れが生じます。また、急に始まった強い息切れの場合、肺塞栓症など緊急対応が必要な病気が隠れていることもあります。

3.動いたときに強くなる息切れ

息切れのご相談で多いのが、「少し動いただけで息が上がるようになった」という訴えです。

  • 階段が以前よりつらい
  • 坂道で何度も立ち止まる
  • 早歩きができなくなった

こうした変化は、心臓や肺が運動に対応できなくなっているサインである可能性があります。

特に心臓の場合、安静時には問題が目立たず、動いたときに初めて症状として現れることがあります。

4.息切れと心臓の関係

心臓の役割は、全身に血液を送り出すことです。運動時には、その量を増やす必要があります。

しかし、心臓の働きが低下していると、また心臓がしなやかさを失っても、運動時に十分な血液を送り出せず、結果として息切れが起こります。当院では、心電図、心エコー、必要に応じて運動負荷検査を行い、息切れの背景にある心臓の状態を客観的に評価します。

5.様子を見てもよいことが多い息切れ

一方で、すべての息切れが病気を意味するわけではありません。

  • 風邪や感染症の回復期
  • 明らかな運動不足
  • 強い緊張や不安

このような場合、一時的な息切れが起こることもあります。ただし重要なのは、改善していくかどうかです。時間が経っても変わらない、あるいは悪化する息切れは、確認が必要です。

6.息切れで迷ったときの現実的な判断基準

次のような場合には、受診を考えてはいかがでしょうか。

  • 以前より明らかに息切れしやすくなった
  • 夜間や横になると息苦しい
  • 足のむくみや体重増加がある

息切れは、「様子を見る」より「一度確認」したほうがよい症状です。

7.息切れに関して大切な考え方

息切れは、早めに原因を確認することで、進行を防げる病気も多い症状です。「年のせい」と決めつける前に、一度立ち止まって確認する。それは、合理的で安全な判断です。

まとめますと

1.息切れは体力低下や高齢化以外にも原因がある

2.症状の起こり方を考えてみることが大事

3.良くわからないときには、早めに医療機関を受診する

文責:渡辺弘之

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