気になる胸痛はありませんか?~心筋梗塞の発症は冬にかけて多くなります~

  • 2023.10.25

こんにちは!看護師の三浦です。10月に入り、肌寒い日が増えてきましたね。特に朝晩と日中の気温差も気になるようになってきました。循環器病院のスタッフに冬と言えばと聞くと多くの人が「心筋梗塞」と答えると思います。なぜ、冬といえば心筋梗塞かというと、1年間を通して心筋梗塞の患者件数は1月に最も多くなるので、冬は病院に緊急搬送される患者さんも多く忙しくなる季節だからです。今日は冬本番が来る前に早期受診し心筋梗塞の発症の予防に繋げていけるよう、胸痛と心筋梗塞についてお話しさせていただきたいと思います。

心筋梗塞とは、心臓の筋肉の周囲に這うように伸び、心臓の筋肉を栄養している冠動脈という血管の内腔が詰まってしまい心臓の筋肉に血流が行かなくなってしまう状態です。心臓の筋肉に充分な血流が行かない虚血状態になると、胸痛が発生しその虚血部分の心臓の壁の動きが悪くなります。それに伴い、血液を全身に送り出すポンプ機能が失調し急性心不全を合併することもあります。その結果、血圧が低下し脳や他の大切な臓器への血流が行かなくなってしまったり、死に至る危険な不整脈が出現してしまうこともあります。

心臓の冠動脈図

心筋梗塞の主な原因は脂質異常症で悪玉(LDL)コレステロールなどが高いと冠動脈の血管の壁にプラークという脂質の塊が蓄積し、その部位が炎症を起こし破綻する際に血栓が生じて冠動脈血管を詰まらせると言われています。また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病も合併しているとより血管が脆くなるので発症率も高まります。日本では心筋梗塞患者の約30%は糖尿病を合併しています。欧米では糖尿病患者の40~50%で心筋梗塞が直接死因と報告されています。

心筋梗塞と胸痛は必ず合致しているわけではありません。心臓から生じている胸痛であったとしても、冠動脈が収縮し一時的に狭くなるもの(冠攣縮性狭心症)や、狭窄している血管が運動などの負荷で酸素や血流量が不足した時に生じるもの(労作性狭心症)、心膜炎、大動脈解離など様々です。また、心臓だけではなく胃炎や逆流性食道炎、気胸、胸膜炎などでも近い場所にある臓器であるため、胸痛は生じます。

逆に、胸痛が無くても心筋梗塞を起こしていることもあります。特に、糖尿病で神経へのダメージがあると、胸痛などのはっきりとした症状を感じにくいこともあります。高齢者ではもともとの活気の低下や痛覚の鈍化などで症状が表面に出ずらいこともあります。胸痛だけではなく、耳鳴りや眩暈ふらつき、視界不良、血圧低下、冷や汗、吐き気などの気分不快、肩や顎の痛みなどの胸部以外の症状も併せて出現することがあります。

冬に心筋梗塞発症数が多くなる理由の一つとして、寒暖差による血圧の変動があります。特にお風呂場と脱衣場の温度差や、室内外の温度差、寒いトイレなど寒暖差により引き起こされる急激な血圧の上昇が冠動脈のプラークの破綻に影響すると言われています。エアコンやヒーターを用いてこれらの寒暖差に気を付けることも重要です。

心筋梗塞を起こさないためには、症状が無くても健康診断での脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を放置せず適切な生活習慣の改善や治療を受け、胸痛など気になる症状が出現している時には早めに循環器専門医を受診されることをお勧めします。

早期に受診することで心臓超音波検査や採血、MRI、造影CTなどの検査で狭窄部位の診断をし、冠動脈が閉塞する前に治療を開始することができます。また、当院では階段や坂道などの労作時の胸痛に対して心臓超音波を当てながらエアロバイクを漕いで運動の負荷をかけながら心臓の検査をできる、運動負荷エコー検査で胸部症状の再現があるか、冠動脈の狭窄に伴う心臓の壁の動きに異常が出現しないかどうかを検査することもできます。

急な胸痛などの症状で受診される場合にも、心筋梗塞が疑われる場合には心臓の筋肉がダメージを受けているかどうかを調べるトロポニンというマーカーの迅速検査を実施できます。この検査が陽性の場合には緊急の専門的な処置をしてもらえる高次医療機関に速やか紹介をすることができます。

冬本番が訪れる前に、胸痛や心筋梗塞を心配されている方や、症状や健康診断の二次精査のご指摘を受けられている方、マラソンなどの負荷がかかる運動ができるかどうか悩まれている方はぜひお気軽にご相談ください。

監修 柴山 謙太郎

PAGE TOP