血圧は数字の病気? 高血圧治療の真のゴールと「鏡を見る」習慣の重要性~血圧は数字だけではありません~

  • 2025.12.21

血圧は健康診断や人間ドックで指摘されてドキッとすることも多いかと思いますが、はたして数字だけの問題なのでしょうか?

今回も当クリニック南行徳本院の渡辺弘之医師に血圧について解説して頂きました。(柴山謙太郎)

血圧は数字の病気? 高血圧治療の真のゴールと「鏡を見る」習慣の重要性

1.血圧は数字だけではありません

「血圧が140を超えてしまった」「今日は120台だから安心だ」「血圧が100以下だから薬をとめておこう」日々の血圧測定で、一喜一憂されている方は多いはずです。しかし、私たち医師が血圧を見るとき、実は「数字そのもの」だけを見ているわけではありません。

高血圧治療において、最も大切なのは数字を下げることではなく、その先にある「命に関わる合併症」を防ぐことにあります。今回は、高血圧との正しい向き合い方について、当院が大切にしている3つの視点をお伝えします。

2.症状がないのに、なぜ薬を飲むの?

よく患者様からと聞かれます。確かに、血圧が高くても頭痛やめまいが常に起こるわけではありません。ここが大事なポイントです。高血圧の本質は「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれる通り、自覚症状がないまま血管をボロボロにしていくことにあります。高血圧治療の真のゴールは、数字をコントロールすることではなく、重篤な合併症を防ぐことです。

3. 3つの合併症

代表的な高血圧の合併症には3つあります。それは脳血管障害、心血管障害と腎不全です。高い血圧が脳の細い血管にかかり続けると、血管が破れたり(脳出血)、詰まったり(脳梗塞)します。一瞬にして寝たきりや命の危険を招く、恐ろしい合併症です。

心臓は高い圧力に抗って血液を送り出さなければならず、次第に肥大し、疲れ果ててしまいます。これが心不全です。また、心臓自身の血管が詰まれば心筋梗塞を引き起こします。

腎臓は「毛細血管の塊」のような臓器です。高血圧によって腎臓の血管が壊れると、老廃物を濾過できなくなり、最終的には人工透析が必要になることもあります。

あなたの10年後、20年後の「当たり前の日常」を守るために、血圧管理が大切です。

4. 起床後30分の新習慣

治療の指針を決めるのは、診察室での血圧よりも、実は皆様がご自宅で測る「家庭血圧」です。この記録が血圧治療では最も参考になります。診察室でも血圧は測定しますが それは参考値で

す。診察室では緊張して高くなる(白衣高血圧)方もいれば、逆に診察室では正常なのに自宅で高い(仮面高血圧)方もいるからです。

そこで私達は、

① 起きてから1時間以内

② 排尿を済ませた後

③ 朝食や服薬の前

④ 就寝前

このタイミングで測る血圧、そしてその記録づけを推奨しています。

5.血圧測定の基本は「安静座位」

バタバタと動いた直後に測っても、それは「動いた後の血圧」であって、あなたのベースの状態ではありません。

①椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばす。

②足は組まずに床につける。

③1〜2分間、何もせずに安静にする。

* カフ(腕帯)は心臓の高さに合わせる。

この「静かな数分間」を持つことが、自分の体と対話する大切な時間になります。

6.「薬を飲んで血圧が下がっているから、検査はしなくていいよね?」

そうおっしゃる方も少なくありません。しかし、血圧の薬を飲むだけで検査を怠るのは、いわば「顔を洗わずに化粧だけしている」ようなものです。私達は、毎朝鏡を見て「今日は顔色が悪いな」「目が腫れているな」とチェックするように、体内も検査などでときどきチェックする必要があります。

採血検査:腎臓の機能が落ちていないか、塩分を摂りすぎていないか(推定塩分摂取量)、心臓に負荷がかかっていないか(NT-proBNPなど)を数値で裏付けます。

ABI:両手足の血圧を同時に測って血管の硬さを調べます

画像診断(心エコー・頸動脈エコー):実際に血管が厚くなっていないか、心臓の壁が厚くなっていないか、いわば「高血圧による被害届」が出ていないかを目で見て確認します。

7.「片手落ち」の治療にならないために

薬はあくまで治療ツールの一つです。塩分制限や運動習慣も合併症の予防には必要です。すでに血管が錆びついていたり、心臓や腎臓が壊れかけていれば、血圧の薬を漫然と服用するだけでは片手落ちです。定期的な検査によって、「今の治療が本当にあなたの体を守れているか」を答え合わせする。このサイクルがあって初めて、万全な高血圧治療と言えるのです。

結びに:人形町・南行徳で「心臓・血管を守る」パートナーとして

高血圧治療は、長く続く道のりです。だからこそ、私たちは単に薬を出すだけの場所でありたくないと考えています。

人形町でも南行徳でも、どちらの場所でも私たちの理念は同じです。

「数字に振り回されず、未来の健康を確かなものにする」

もし、今の治療に不安があったり、健康診断の結果をそのままにしていたりするなら、ぜひ一度ご相談ください。あなたの「健康の鏡」を一緒に覗き、最適なケアをご提案させていただきます。

文責:渡辺 弘之、柴山 謙太郎

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