動悸は「気のせい」だけじゃない~動悸があったらまず落ち着こう~

  • 2025.12.19

みなさんは日中に胸がドキドキしたり、脈が飛ぶような感じがあったり、1~数拍で大きな脈を自覚したり、様々な違和感を感じることがあると思いますが、これらの症状をすべて動悸といいます。

今回は動悸について、当院の渡辺弘之医師に解説していただきました。(柴山 謙太郎)

動悸は「気のせい」だけで片づく症状ではありません。動悸を感じたとき、多くの方はまず戸惑い、あわてます。
「今、何が起きたのだろう」「心臓がおかしくなったのではないか」
一方で、
「疲れているだけかもしれない」「緊張のせいだろう」とも思います。


動悸は、誰にでも起こりうる症状です。そのため、「よくあること」として片づけられがちです。しかし同時に、心臓のリズムが乱れたときに最も分かりやすく現れるサインでもあります。大切なのは、不安になることでも、無視することでもなく、何が起きている可能性があるのかを整理することです。

1.さまざまな動悸

患者さんが感じている「動悸」とは診察室で「動悸があります」と言われても、その中身は人によって大きく異なります。
実際には、

  • 「心臓が急に自己主張してくる感じ」
  • 「胸の中でドン、と強く打つ感じ」
  • 「バクバクして、音が聞こえる気がする」
  • 「脈が一回抜けたような感じ」
  • 「胸の奥がザワザワして落ち着かない」

中には、
「ドキドキというより、ドン、ドン」
「速いというより、不規則」
と、細かな違いを訴えられる方もいます。

こうした言葉は、診断のヒントが多く含まれています。

2.価値ある情報は始まり方と終わり方

動悸を評価するうえで重要なのは、「どれくらい強いか」よりも、「どのように始まり、どのように終わるか」です。

患者さんはよく、次のように話されます。

  • 「何の前触れもなく、急に始まります」
  • 「スイッチが入ったみたいに突然です」
  • 「気づいたら始まっていて、急に止まります」

このように突然始まり、突然終わる動悸は、心臓の電気的なリズム異常で説明できることがあります。

一方で、「だんだん速くなって、気づいたら落ち着いています」という場合は、緊張やストレスが関与していることもあります。

3.動悸と一緒に感じる症状

動悸は、単独で起こるとは限らず、次のような感覚を同時に訴えることがあります。

  • 「少し息がしづらくなります」
  • 「頭がふわっとします」

これらは、必ずしも重い病気を意味するとは限りませんが、動悸が体全体に影響を与えているサインでもあります。

4.注意が必要な動悸

次のような動悸は、確認が必要です。

  • 突然始まり、強く続く
  • 動悸と同時にめまい
  • 立っていられない
  • 意識が遠のく

これらは、不整脈が原因である可能性があります。
不整脈の中には、すぐに命に関わらなくても、治療や経過観察が必要なものがあります。

5.繰り返す動悸は?

「一度だけなら気にしなかったのですが…」「最近、回数が増えてきました」
こうした訴えも、診察室ではよく聞かれます。

  • 「週に一度くらいだったのが、ほぼ毎日あります」
  • 「前より長く続くようになりました」
  • 「夜、静かになると余計に気になります」

動悸は、頻度の変化が重要です。回数が増える、持続時間が長くなる場合、背景にあるリズム異常が変化している可能性があります。

6.動悸と脳梗塞の関係

特定の不整脈、特に心房細動では、心臓の中に血のかたまり(血栓)ができやすくなり、それが脳に飛ぶと、脳梗塞を引き起こすことがあります。

患者さんの中には、
「動悸があるだけで、そんな話になるとは思わなかった」
と驚かれる方もいます。動悸そのものだけでなく、その背景を評価することが重要なのは、このためです。

7.様子を見てもよい動悸

一方で、すべての動悸が危険なわけではありません。

  • 強い緊張やストレス
  • 寝不足が続いているとき
  • カフェインやアルコールを多く摂ったあと

このような状況で起こる動悸は、原因が比較的はっきりしており、自然に落ち着くこともあります。ただし、「同じ状況で何度も起こる」「以前より強く感じる」場合は、一度確認する価値があります。

8.患者さんがよく口にする迷いの言葉

診察の最後に、患者さんはよくこう言われます。

  • 「これで病院に来てよかったんでしょうか」
  • 「大したことじゃなかったら申し訳なくて」
  • 「気にしすぎだと言われるかと思っていました」

動悸に関しては、原因を整理すること自体が受診の目的です。「何もなかった」という結果は、決して無駄ではありません。

まとめますと

1.動悸が出ても慌てない

2.起こり方と終わり方、頻度が大事

3.失神は要注意

4.わからなければまず受診

文責:渡辺 弘之

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