運動をしている方、始める方へ 健康チェックはしていますか?
- 2024.05.07
こんにちは、看護師の堀井です。外での運動も始めやすい季節となってきましたね。近頃は世界的な健康ブームで、運動を始める方も増えてきたように感じます。
大の運動嫌いだった私自身も、筋力トレーニングと有酸素運動を始めてちょうど2年になりました。
運動は健康的な生活を送る上で重要です。しかし、無理な運動や健康状態を無視した運動はかえって健康を損なう原因となり得ます。
運動を始める方も、すでに運動習慣のある方も安全に運動を続けていけるように定期的な健康診断はもちろんのこと、健診で異常所見がある時や気になる症状がある時には放置せずにさらに詳しいメディカルチェックをお勧めします。
運動をした時の心臓の反応は?
運動をすると心拍数が上がり、心臓の収縮力の増強とともに血圧も上がります。心臓は心拍数を上げることで全身・必要な筋肉や臓器への血流や酸素をより多く届けようとしますが、心臓自体の酸素需要および供給量も高まることになります。そのために運動時には心臓自体を栄養している血管(冠動脈)も拡張し、その血流量は安静時の4倍にもなります。
マラソン大会で突然心停止がおこるのは
フルマラソンは長時間にわたる激しい運動であり、心臓には相当な負荷がかかります。これによって、心臓の異常や不整脈が引き起こされるリスクが高まります。
マラソン大会が開催される時期や場所によっては高温多湿の条件下でのランニングが求められ、このような環境下での運動は熱中症や脱水症状を引き起こし、心臓の負担を増加させる可能性があります。
さらに、動脈硬化や心筋症などの併存疾患がある場合には突然の心不全や心筋梗塞や致死的不整脈の発症による心臓突然死のリスクが増加します。
東京マラソンだけみると、2023年度までの過去16回開催で約51万9千名のランナーが参加し、そのうち11名のランナーが走っている最中に突然倒れ、一時は心肺停止に陥ってしまいました。(救命活動によって100%が救命されています!)
過去の健康診断で指摘がありマラソンなどの大会に参加したり、より強度の強い運動をしようと考えている場合、日常的な運動で息切れなどの症状が気になっている場合など、今後運動をしていくうえでご不安がある方は運動中に生じる心臓や血管のリスクを事前に確認しておくことをお勧めします。
運動中の症状・心臓の状態が気になる方へ、当院でできる検査
健康診断や人間ドックでも心電図などの心臓の検査はありますが、あくまでそれらは「安静時」のデータです。
安静時の検査データも重要ですが、心臓や血管の病気では例えば狭心症のように安静時には全く異常は示さずに運動の負荷をかけたときにだけ異常を生じることあります。
当院ではこれらの疾患のリスクを確認するため、24時間の心電図を観察する「ホルター心電図」や、運動をしながら心臓の動きや心電図・血圧・酸素飽和度を確認できる「運動負荷心エコー」の実施が可能です。これらの検査では、安静時だけではないデータを確認することが可能ですので、より一方進んだ心臓や血管の検査と考えていただければと思います。
・ホルター心電図
胸部に電極と機械を取り付け、そのまま帰宅していただき、翌日返却していただくまでの心電図をとり続ける検査です。身体にシールを数か所貼るだけなので、検査中の痛みはありません。
24時間の検査中は、運動はもちろんシャワー・飲酒や喫煙などの嗜好品もOKです。実際に検査中にランニングや普段の運動をしてもらうことで運動中の心電図をとることもできます。
・運動負荷心エコー
自転車をこぐ運動をしていただきながら、運動中の心臓の動き・心電図・血圧・酸素飽和度を確認する検査です。運動負荷心エコーは運動負荷心電図にくわえて心エコーの評価も可能であるため、運動負荷心電図よりも情報量が格段に多く、心血管リスクを確認するための精度がより高いことが知られています。
ベッドにペダルをつけて寝た状態で段階的に負荷を上げて行うので、高負荷のトレーニングをされている方から長距離歩行の難しい方・高齢の方まで安全に実施することができます。
実際に運動をしながら検査をすることで運動中に症状が出る方はもちろん、自覚症状のない方でも安静時にはみつけられなかった異常がみつかる場合があります。運動負荷検査は医師・検査技師・看護師の医療スタッフが複数名で行うので異常所見が出た時の対応も安心です。また、運動負荷は継続が危険な所見がでない限り患者様ご自身が「もう限界!」となるところまで行いますのでご自身の心肺機能がどこまでの負荷に耐えられるかの目安を出すことができます。
近年の健康ブームで、ランニングに限らずボクササイズなどの激しい有酸素運動や高強度の筋力トレーニング、HITT(高強度インターバルトレーニング)を取り入れる方も増えてきました。
強度の高い運動にかぎらず「最近、動くと前より息切れしやすいな」「健診の心電図でひっかかっているけど運動を始めてもいいかな」といったご不安も、受診と検査をすることで安心して運動を始めることができるはずです。
受診にかぎらず「新年度から」「〇歳の誕生日から」など運動をはじめた記念日をつくることは三日坊主にならず続けられる秘訣だと私自身は考えています。
皆さんが安心して、楽しく運動を始められるきっかけとなれば幸いです。
監修:柴山 謙太郎