心臓の病気【循環器疾患:冠動脈疾患・不整脈・心臓弁膜症・心筋症】

  • 2019.07.11

こんにちは、東京中央区で循環器内科・内科を診ております、東京心臓血管・内科クリニック院長 柴山です。今回は、心臓の病気(心疾患)がどの程度日本人の生活に影響しているか、厚労省から毎年発表されている「人口動態統計」を基に考えてみます。

2018年に発表された日本人の死因の第1位は「悪性新生物(癌)」、第2位は「心疾患」、第3位は「脳血管疾患」でした。第1位の悪性新生物は肺癌や膵臓癌など各臓器の癌を全て合わせたものになります。しかし、心疾患(心臓の病気)は単一臓器によるものです。単一臓器による死因としては心疾患が最も多く、死亡者数は17万3,125人で全体の16.0%を占めています。

過去にさかのぼって日本人の死因の推移をみてみると、100年前から大きく変化してます。このことは日本社会の変化と強く関係しています。1900年代初期は肺炎や胃腸炎や肺結核など感染症と脳血管疾患が主な死因でした。しかし、抗生剤の登場に伴って感染症によって死亡する人が減少する一方、戦後の日本人の高齢化や生活スタイルの欧米化を背景として悪性新生物と心疾患によって死亡する人が増加することとなりました。

『 厚生労働省 平成30年人口動態統計 』から引用

1. 心臓の病気の種類

心臓の病気は、大きく四つに分類されます。心臓に血液を届ける「冠動脈」の病気、心臓を規則正しく動かすための「刺激伝導系」の病気、左右の心室の出入り口にある「心臓弁」の病気、心臓の筋肉である「心筋」の病気です。

冠動脈の病気(冠動脈疾患)とは、冠動脈に動脈硬化やプラーク破綻が生じることで冠動脈の内腔が狭窄したり閉塞したりすることによって、血液の供給が極端に低下することで酸素や栄養が行き届かなくなる病気です。冠動脈の血流が低下して一時的な虚血が生じた病態を狭心症と呼び、血流が著明に低下するか途絶することで心筋に不可逆的な障害(壊死)が生じた病態を心筋梗塞と呼びます。

冠動脈の解剖

刺激伝導系の病気(不整脈)とは、心臓のリズミカルな動きが低下して心臓内での協調性が低下したり、拍動が極端に低下あるいは増加したりすることによって心臓のポンプ機能が低下する病気です。不整脈によっては心不全だけでなく脳梗塞の原因となる場合もあるため、早期の診断と治療が必要となります。また、冠動脈の病気や心臓弁の病気や心筋の病気によって引き起こされる不整脈もありますので、その背景には注意が必要です。

刺激伝導系

心臓弁の病気(心臓弁膜症)は、心臓弁が機能的に障害をきたすことによって生じます。心臓弁膜症は進行すると心臓の負担が増加していくことが分かっており、心不全の原因として確実に診断しておかなければならない病気です。 心エコーは心臓弁膜症の診断に必須の検査であることが知られています。

心臓弁の解剖

心筋の病気とは心臓の筋肉が何らかの原因で動きが弱くなってしまうものを指します。原因は様々なものが知られておりアルコールによるものや妊娠に伴うものもあります。冠動脈疾患がきっかけとなるものが最も多く、それ以外にも不整脈や心臓弁膜症がきっかけとなることもあります。原因が分かっていない状況で心筋の働きが低下している場合はその原因を心エコーなどでしっかりと調べておく必要があります。

心臓の病気は大まかに以上の4つに分類されますが、そのすべてに一番大きく影響する因子は年齢です。ただし、年齢に加えて高血圧、高コレステロール血症、糖尿病などの生活習慣病が心疾患のリスクをさらに上昇させることが分かっています。

これらの生活習慣病をきちんとコントロールしておくことが、心臓のポンプ機能を長持ちさせるために必要なことといえます。 そして、心不全のリスクがある方は、定期的に心エコーで心臓の状態を把握しておくことが重要です。

文責:柴山 謙太郎

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