大豆がコレステロールを下げることを再確認【大豆 = 高コレステロール血症に対する健康食品】
- 2019.07.29
こんにちは、中央区日本橋人形町で内科・循環器内科を診ております「東京心臓血管・内科クリニック」院長の柴山です。
今回は、多数の論文を再解析した結果として、大豆がコレステロールを下げる健康食品であると再評価されたことが米国心臓学会誌から報告されました。 (Journal of the American Heart Association. 2019;8. https://doi.org/10.1161/JAHA.119.012458)
大豆に含まれている蛋白質は、 過去20年間に実施された多くの研究結果から、コレステロールを下げて心臓に役立つ健康食品であると知られています。一方、米国食品医薬品局(FDA)は2017年に、大豆に対して否定的な研究結果であったいくつかの論文をもとに健康食品表示を再評価する方針としていました。
今回の研究では、健康食品表示の許可をFDAが再検討する背景となった大豆への否定的な研究論文 46件の結果を集めて再評価しております。
この解析結果として、まず大豆は総コレステロールを下げることが明らかになりました。そして、悪玉コレステロールとしてよく知られているLDLコレステロールにおいては平均4.2~6.7 mg/dL低下させたと報告しております。この数字は大豆についての FDA の健康食品表示の承認を得ているその他の健康食品がLDLコレステロールを平均6.3 mg/dL低下させるのと同程度でした。
大豆への否定的な論文のみを再評価した結果でもコレステロールを下げることを確認できたため、大豆がコレステロールを低下させる健康食品であることが明確になったと考えられます。
それでは、コレステロールとはそもそも何なのでしょうか。まず、 身体のなかには4種類の脂質(中性脂肪、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸)が存在します。これらの脂質は、それぞれ身体を健康に保つ上で重要な役割があるため、必ず一定量を体内に維持する必要があります。
コレステロールは、細胞膜や身体の働きを微調整するホルモン、あるいは胆汁酸(胆汁という消化液に含まれる、脂肪を消化・吸収するための物質)などを形成するための物質として必要なものです。 肝臓でつくられたコレステロールは血液(血管)によって全身に運ばれ、余分なコレステロ ールは血液で肝臓に戻ってきます。
コレステロールはそのままでは水に溶けにくい性格を持っており蛋白質などと結合して血液に溶けて運ばれているため、その結合する蛋白質によってLDLコレステロールとHDLコレステロールに分類されるのです。そして、 肝臓中のコレステロールが全身の各細胞に運ばれるのはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)であり、 各細胞の余分なコレステロールを肝臓に戻すのはHDLコレステロール(善玉コレステロール)となります。
LDLコレステロールが増えると、それが血管壁に入り込んで粥状の動脈硬化となります。粥状の動脈硬化は冠動脈におよぶと心筋梗塞、脳血管におよぶと脳梗塞のリスクとなるため、LDLコレステロールは悪玉と呼ばれるのです。一方、善玉コレステロール(HDLコレステロール)は逆に動脈硬化を防ぐ働きがあります。
健康的な心臓のためには、毎日の運動や日々の食事による管理が重要であることはよく知られています。その中でも食事において、心臓発作および脳卒中のリスクを低下させたい場合、全般的により植物性ベースの食事を摂取すべきとされています。
今回の研究結果から、大豆食品はコレステロールを下げることができる優れた蛋白質源であることが再認識されました。大豆は、肉から摂取することが多い蛋白質を植物ベースにするための一つの選択肢であると考えられます。どうか皆様のご健康にお役立ていただければ幸いです。
文責:柴山 謙太郎